1. はじめに――「全薬局に同じ資材を送る」時代は終わった
製薬メーカーの営業企画担当として、MRの活動支援やDM施策を設計する立場にいると、こんな声をよく耳にしないでしょうか。
| 「薬局向けDMを打ったが、対象が広すぎて費用対効果が見えない」 「エリア担当MRがどの薬局から優先すべきか判断できていない」 「認定薬剤師が多い薬局を狙いたいが、リストの作り方がわからない」 |
全国に約6万店以上存在する調剤薬局に対して、予算・人員ともに限られた中で成果を出すには、「どこに・いつ・何を届けるか」を精緻に設計することが不可欠です。
本記事では、製薬メーカーの営業企画担当が調剤薬局データを活用して、認定薬剤師の在籍数や延べ患者数を軸にしたターゲティングを実現するための具体的なステップを解説します。
2. 製薬営業企画が直面する3つの壁
壁①:ターゲットの絞り込みができていない
「処方箋枚数が多い薬局」「自社領域の認定薬剤師が在籍している薬局」を狙いたくても、その情報が社内に存在しないケースは珍しくありません。社内CRMにはMRが個別に入力した断片的な情報しかなく、網羅的なリストが組めない状態です。
その結果、DMの送付先がエリア内の全薬局になり、費用の大半が「反応しない薬局」への無駄打ちになります。
壁②:アプローチのタイミングがずれている
新薬の発売・適応追加・ガイドライン改訂といった「勝負どころのタイミング」に合わせて、情報感度の高い薬局に集中してリーチしたい。しかし、そのためのリストが発売直前になっても用意できず、MRの個人ネットワーク頼みで終わるケースが多いです。
特に新規指定で開設したばかりの薬局(新規指定・承継・移転等を含む)は、まだ出入り業者が固まっておらず関係構築のゴールデンタイムであるにもかかわらず、把握が遅れて競合に先を越されることがあります。
壁③:リスト作成に時間とコストがかかりすぎる
外部データベースを都度購入すると費用がかさみ、内製するにはデータ整備の工数が膨大です。「月次でリストを更新したい」という要望に応えられず、鮮度の落ちたリストをMRに渡し続けているケースも少なくありません。
3. データを使った突破口――3ステップで精緻なターゲティングを
ステップ1:無料データでエリアの薬局数・分布を把握する
まず「医薬介護データポータル」の無料データ(調剤薬局基本版)で、担当エリアの薬局数と地理的分布を確認します。取得できるのは「薬局名・郵便番号・住所」のみですが、以下の用途には十分です。
- 都道府県+市区町村単位で薬局数を集計し、MRの担当エリアと照合
- 薬局密度の高いエリア(競合が多い)と低いエリア(白地)を仕分け
- 本部への活動計画資料に「エリア内薬局数」の根拠データとして添付
このステップは無料・即時で完結します。「まずエリアの全体像を把握する」ための出発点として活用してください。
ステップ2:有料の調剤薬局詳細データで条件を絞り込む
エリアの全体像が見えたら、次は有料の調剤薬局詳細データ(ナヴイ由来)で「アプローチすべき薬局」に絞り込みます。
| 絞り込み条件 | 活用できる収録項目 | 製薬営業企画としての狙い |
| 専門領域の認定薬剤師が在籍している | 認定薬剤師の人数・認定薬剤師の種類 | 自社製品の適応領域に精通した薬剤師がいる薬局を優先 |
| 患者規模が大きい | 延べ患者数 | 処方箋枚数が多く、処方に影響力の高い薬局を優先 |
| 連絡手段が確保できる | 電話番号・FAX番号 | テレアポ・FAXDM・DM送付が可能な薬局に限定 |
| 営業時間が長い(応対機会が多い) | 営業時間 | MRが訪問しやすい時間帯に営業している薬局 |
ステップ3:3データのクロス活用でリーチを多層化する
調剤薬局データだけでなく、医療機関データ・介護施設データを組み合わせることで、処方元となる医師・施設へのアプローチも同時並行で設計できます。
| データ種別 | ターゲット例 | 製薬営業としての役割 |
| 調剤薬局詳細データ | 認定薬剤師在籍・延べ患者数上位の薬局 | 薬剤師への製品情報提供・FAXDM送付 |
| 医療機関データ | 対象診療科・訪問診療実施クリニック | 処方医へのMRアプローチ・資材送付 |
| 介護施設データ | 対象薬を使用する入居者がいる施設(サービス種別で絞込) | 施設内処方の拡大・施設薬剤師との連携 |
たとえば循環器系の製品であれば、「在宅療養支援診療所(医療機関データ)+在宅対応薬局(薬局詳細データ)+グループホーム・有料老人ホーム(介護施設データ)」という3点セットでエリアのキーパーソンを網羅することができます。
4. ペルソナ別・よくある失敗と回避策
| よくある失敗 | 原因 | 回避策 |
| 認定薬剤師を絞り込んだつもりが、対象外の領域ばかりだった | 認定薬剤師の「種類」まで確認せず、在籍人数だけでフィルタした | 調剤薬局詳細データの「認定薬剤師の種類」項目で自社領域の認定資格を持つ薬剤師が在籍する薬局に絞り込む |
| DMを打ったが反応ゼロ。後から薬局が廃業済みだとわかった | 古いリストを使い続けた。薬局の閉局・移転を把握できていなかった | 毎月更新の無料データで薬局数の増減を確認し、新規指定・承継・移転を新規指定医療機関・薬局データで追う |
| チェーン本部にアプローチしたかったが、個店データしか持っていなかった | 開設者(法人)情報がリストに含まれていなかった | 調剤薬局本部データ(開設者法人名・本部住所・代表電話付き)を活用し、本部営業とMR活動を連動させる |
| 新規開局した薬局への訪問が遅れ、競合MRに先を越された | 新規指定情報の把握が遅く、開局から数ヶ月後にようやく認知 | 新規指定医療機関・薬局データ(毎月更新)で新規指定・承継・移転等を早期に把握し、タイムリーに動く |
5. 弊社の有料データ――製薬営業企画に刺さる2つのデータ
① 調剤薬局詳細データ(ナヴィ由来)
製薬営業企画担当にとって最も重要なのは、「認定薬剤師の在籍情報」と「延べ患者数による規模感の把握」です。この2軸で絞り込みができるのが調剤薬局詳細データの最大の強みです。
- 主な収録項目:薬局名・住所・電話番号・FAX番号・Email・URL・認定薬剤師の人数・認定薬剤師の種類・薬局の薬剤師数・延べ患者数・営業時間・駐車場 ほか
- 活用方法:自社製品の適応領域に関連する認定薬剤師が在籍し、かつ患者規模が大きい薬局を抽出してMRの優先訪問先リストを作成
- 無料版(薬局名・郵便番号・住所のみ)からのアップグレードで、ターゲティング精度が格段に向上します
② 新規指定医療機関・薬局データ
各地方厚生局の公開情報を加工した、新規に医療機関番号が付与された施設のリストです。新規指定・承継・移転等が含まれます。
- 主な収録項目:登録区分(新規・承継・移転等)・医療機関番号・施設名・住所・電話番号・FAX番号・診療科目・開設者(法人名)・指定年月日 ほか
- 活用方法:毎月更新されるデータで新規指定薬局を早期に把握し、競合より早くMRを動かす
| ⚠️ 注意:新規指定データの「新規」は、医療機関番号が新規に付与された施設を指します。必ずしも新規開業のみではなく、承継・移転等も含まれます。新規開業施設のみを対象とした用途にはご注意ください。 |
6. まとめ――小さく試して、再現性のある営業企画を
製薬メーカーの営業企画担当が調剤薬局データを活用するときの基本的な流れをまとめます。
| フェーズ | 使うデータ・手段 | アクション |
| Phase 1 エリア把握 | 無料・調剤薬局基本版 | 担当エリアの薬局数・分布を確認。MR活動計画の根拠資料として活用。 |
| Phase 2 ターゲット絞込 | 有料・調剤薬局詳細データ | 認定薬剤師の種類×延べ患者数で優先訪問先リストを作成。 |
| Phase 3 アプローチ | FAXDM発送代行 or MR訪問 | 発売・適応追加のタイミングに合わせてFAXDMを一斉送付。MRは上位リストを優先訪問。 |
| Phase 4 新規先の把握 | 有料・新規指定医療機関・薬局データ | 毎月の新規指定リストで新規先を早期把握。競合に先駆けた関係構築を実現。 |
まずは無料データで「自社MRのエリアに何軒の薬局があるか」を確認することから始めてみてください。全体像が見えると、次のアクションが自然と決まります。
詳細データのサンプルやお見積りは、お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
参考文献・引用元
本記事は以下の公的情報を参考に作成しています。
- 厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」https://www.mhlw.go.jp/
- 各地方厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定一覧」(公開データ)
- 厚生労働省「医療情報ネット(ナヴィ)」https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/