| 📋 この記事のペルソナ:調剤薬局チェーンの本部企画担当 |
1. はじめに――「出店候補エリアを勘で決めている」という思い込みからの脱却
「出店エリアはこれまでも現場の肌感覚でやってきた。データなんて、大手チェーンがやることだ」。
中堅・独立系の調剤薬局チェーンの本部企画担当と話すと、このような声をよく聞きます。確かに属人的な経験値にはデータでは測れない部分もあります。しかし、この「勘頼み」の裏側に潜んでいるのが「なぜあのエリアでいつも負けるのか、実は理由が分かっていない」という問題です。
| よくある思い込み:「データは大手チェーン向け。うちの規模では必要ない」 実態:無料でも「どの市区町村に何軒あるか」は把握できます。競合チェーンの動向を知らないまま 出店を続けることのほうが、規模を問わずリスクです。 |
本記事では、調剤薬局データベースを活用して「競合チェーンが手薄なエリア」を特定し、出店・撤退・強化の意思決定をデータで裏付けるための具体的な方法を解説します。
2. チェーン本部企画担当が直面する3つの壁
壁①:エリアの「薬局飽和度」が見えていない
出店を検討しているエリアに既存の競合薬局がどれだけあるかを、正確に把握できていないケースが多いです。既存店のMR情報や不動産業者からの情報だけでは、エリア全体の薬局密度が掴めません。その結果、すでに過密なエリアに出店して思ったように処方箋枚数が取れない、という事態が起きます。
壁②:競合チェーンの「動き」に気づくのが遅い
競合チェーンが新規出店・承継・移転を行ったことに気づくのが、数ヶ月後になることがあります。「いつの間にか競合の新店が隣エリアにできていた」という状況が続くと、先手の戦略が取れません。新規指定医療機関・薬局データを毎月確認することで、競合の動きをリアルタイムに近い精度で把握することができます。
壁③:医療機関との連携状況がエリア判断に入っていない
薬局は単体で存在するのではなく、門前・近隣の医療機関から処方箋が流れてきます。しかし出店判断の際に「そのエリアに訪問診療クリニックや高患者数のクリニックがどれだけあるか」を確認できていないケースがあります。薬局数だけではなく、医療機関データを組み合わせることで、処方箋供給源としての医療機関密度も確認できます。
3. データを使った突破口――3ステップでエリアを科学する
ステップ1:無料データで全国の薬局分布を把握し「候補エリア」を選ぶ
医薬介護データポータルの無料データ(調剤薬局基本版:薬局名・郵便番号・住所)で、都道府県・市区町村別の薬局数を集計します。
- Excelのピボットテーブルで市区町村ごとの薬局数を集計
- 人口・世帯数などの公的統計と掛け合わせ「人口千人あたりの薬局数」を算出
- 薬局密度が低いエリア(=市場に空白がある可能性)と、自社の出店予算感を照合して候補エリアを絞り込む
このステップは無料・即日で完結します。大手チェーンが大規模な調査費を使って行っていることの基礎部分を、無料データで代替できます。
ステップ2:有料データで「競合の顔ぶれ」と「医療機関の密度」を確認する
候補エリアが絞れたら、有料データで精度を上げます。
| 使うデータ | 確認すること | 出店判断への活用 |
| 調剤薬局詳細データ | 開設者名(法人名)で競合チェーンの店舗数を確認 延べ患者数で各店舗の規模感を把握 FAX番号・電話番号の有無 | 「競合大手チェーンが手薄なエリア」を特定 「患者数が多い既存薬局が1軒しかないエリア」は需要があり参入余地がある可能性 |
| 医療機関データ | 診療科目・訪問診療の有無・病床数 電話番号・FAX番号・URL | 処方箋供給源となる医療機関の密度を確認 内科・整形外科が多いエリアは処方箋ボリュームが安定しやすい |
| 調剤薬局本部データ | 開設者(法人)の本部住所・代表電話 同一法人が運営する店舗の分布 | 競合チェーンの「本部所在地から何km圏内に集中出店しているか」を把握 自社との競合強度をエリア単位で可視化 |
ステップ3:新規指定データで「競合の最新の動き」を先取りする
出店判断で最も重要なのがタイミングです。競合チェーンが候補エリアへの出店を進めている場合、それを事前に察知できるかどうかで戦略が変わります。
新規指定医療機関・薬局データには、各地方厚生局が公開した新規に医療機関番号が付与された施設の情報(登録区分:新規・承継・移転等を含む)が含まれています。競合チェーンの法人名で絞り込むことで、「競合が最近どのエリアに動いているか」を毎月モニタリングできます。
| ⚠️ 注意:新規指定データの「新規」区分は、医療機関番号が新規に付与された施設を指します。新規開業のみではなく、承継・移転等も含まれます。競合の「純粋な新規出店数」とは異なりますが、動向把握の指標として有効です。 |
4. ペルソナ別・よくある失敗と回避策
| よくある失敗 | 原因 | 回避策 |
| 出店したが処方箋枚数が思ったより少なかった | エリアの医療機関数・診療科目を確認せずに薬局密度だけで判断した | 医療機関データで内科・整形外科・在宅クリニックの密度を確認し、処方箋供給源の厚みを出店判断に組み込む |
| 競合の新店が近隣にできてから気づいた | 新規指定データを確認していなかった。情報源が営業担当者の目視頼みだった | 新規指定医療機関・薬局データを月次で確認。競合法人名で絞り込み、候補エリア周辺の動きを定点観測する |
| 撤退すべきエリアを見誤り、コストをかけ続けた | 既存店の処方箋枚数の下落原因が「エリアの医療機関減少」なのか「競合増加」なのかを切り分けられなかった | 無料データで薬局数の増減をモニタリング。医療機関データで同エリアの診療所数の変化を追い、撤退・継続の判断を定量化する |
| 本部が出店を決めたが現場の薬剤師確保が難しかった | エリアの認定薬剤師在籍数など薬剤師の分布を確認していなかった | 調剤薬局詳細データの「薬局の薬剤師数」「認定薬剤師の人数」でエリアの薬剤師供給感を確認。採用難エリアの出店計画に現実的な想定を持つ |
5. 弊社の有料データ――チェーン本部企画に使える2つのデータ
① 調剤薬局詳細データ+ 調剤薬局本部データ
詳細データの「開設者名(法人名)」で競合チェーンの店舗分布を把握し、本部データで同一法人の本部所在地・代表電話を確認。法人単位での競合マッピングが可能になります。
- 収録項目(詳細データ):薬局名・住所・電話・FAX・Email・URL・開設者名・認定薬剤師数と種類・薬剤師数・延べ患者数・営業時間 ほか
- 収録項目(本部データ):開設者(法人)名・本部住所・代表電話(独自調査による完成DB)
- 活用方法:競合法人の店舗数・延べ患者数・分布エリアを一覧化し、自社との競合強度マップを作成
② 新規指定医療機関・薬局データ(毎月更新)
各地方厚生局の公開情報を加工した月次データです。登録区分(新規・承継・移転等)・指定年月日・施設名・住所・電話・FAX・診療科目・開設者(法人名)などを収録。
- 活用方法:競合チェーンの法人名で絞り込み、毎月の新規指定動向を確認。候補エリアへの競合参入を早期察知
- 注意:新規指定≠新規開業。承継・移転等も含まれます
6. まとめ――「勘」に「データ」を掛け合わせる
出店・撤退の意思決定を完全にデータ化することはできません。最終的には現場の肌感覚や地域との関係性も重要です。ただし、「勘だけ」では競合の動きに後手を踏み続けます。
| フェーズ | 使うデータ | アクション |
| Phase 1 候補エリア選定 | 無料・調剤薬局基本版 | 市区町村別の薬局密度を算出。薬局が少ないエリアを候補としてリストアップ。 |
| Phase 2 競合・医療機関の確認 | 有料・調剤薬局詳細データ 有料・医療機関データ | 競合チェーンの店舗数・患者規模を確認。医療機関の診療科目・密度でポテンシャルを検証。 |
| Phase 3 競合動向モニタリング | 有料・新規指定医療機関・薬局データ | 毎月の新規指定データで競合の動きを先取り。候補エリアへの参入を早期察知。 |
| Phase 4 本部交渉の根拠づくり | 有料・調剤薬局本部データ | 競合法人の本部所在地・展開エリアを一覧化。出店稟議の「競合分析」資料に活用。 |
まず無料データで「候補エリアの薬局数」を市区町村別に集計するところから始めてみてください。数字を眺めるだけで、次の議論が変わります。
詳細データのサンプルやお見積りは、お問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
参考文献・引用元
- 厚生労働省「医療情報ネット(ナヴィ)」https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/
- 各地方厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定一覧」